往生院だより 8月お盆特別号コラムより
                貧者の一灯

  遙か昔、お釈迦様が仏法を広めようと活躍されていた時代、多くの信者さん
 が直接に説法を聞こうと集まり、そして、夜の法話の時には、それぞれがお釈
 迦様に献じるために油の入った器を持ち寄り、灯火を捧げていた。

  ある時、一人の貧しい老婆がお釈迦様の法話を聞きたいと、お金のない中で
 自らの長い美しい自慢の髪を切り、それを油屋に売って、高価な油を手に入れ
 て、灯火をお釈迦様に献じた。

  この時、お釈迦様の法話を邪魔しようと、ダイダバッタという名前の法術を使う
 邪悪な僧が強風を起こし、何千という捧げられた灯火を全て消し去ろうとした。

  そして、強い風により場内の信者たちは混乱し、ざわめき、お釈迦様の声もか
 き消されようとした。しかし、何千という灯火が消え去ってしまう中、たった一つの
 灯火が残り、ダイダバッタがどんなに強い風を起こしても決して消えなかった。

  そのたった一つの灯火こそ、貧しい老婆が自らの髪を切ってまで捧げたものだ
 った。その一つの灯火を見て、何千という信者は静まり、お釈迦様も無事に法話
 を続けられたのだった。

  この一灯の志。先日、東福祉作業所さんの募金活動をお手伝いしていた時、
 お体が不自由で、車いすに乗った方から募金を頂いた。健常者の方でも素通り
 される方が多い中で、少し声を出すことが嫌になりそうになりかけていた自分は、
 感動し、元気を頂いた。思いのこもった志は、必ず通じるものがどこかにあるの
 だと改めて感じました。

 川口 英俊 副住 合掌



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