往生院だよりコラム 11月号より |
幸福論 |
「幸福」について、皆さんはどのように考えられていますでしょうか? 誰もが幸福になりたいと願い、生きていますが、本当に難しい概念で、また人 それぞれでも捉え方が違うのものです。今回は「幸福論」について考えてみました。 「幸せとは?」と聞かれて世間一般には、「お金持ちになりたい」「大きな家に住み たい」「有名になりたい」「出世したい」「大好きな人と結婚したい」等と答えられるこ とが多いと思います。 私はこれらを「自己満足欲求の実現幸福」と捉えています。現実のところでは、 これらを満たしたとしても一時的な幸福感を味わうだけに過ぎず、欲を持った人間 は、結局のところ次々にあれもこれもと欲することになり、その幸福感もあまり長続 きしないものであると思います。 であるならば、真の幸福を実現するためには、どうすれば良いのだろうかと修行時 代から考えてきました。もちろん、私個人の一見解に過ぎないと思いますが、次のよ うな考察に至りました。 人間とは、他の動物たちと違い、考える能力があります。そんな中で、生きていくと いうことと、死ぬということにも必ず意味を持たせたいと願って存在してきました。他の 動物たちは、大自然の法則に従い「自分のために生き、自分のために死ぬ」だけなの ですが、人間はそうもいかないようになりました。そして、人間は自分のためだけに生 きて、自分のためだけに死ぬほど強いものではなく、「自分を超えた何かのために生 き、何かのために死にたい」と考えるようになってきました。 ゆえに、自分のためにという「自己満足欲求の実現幸福」というものでは、なかなか 幸福感を得られず、得られたとしても長続きしないものであると思います。 有史以来、人間は常に自分を超えた、私心滅却・滅私奉公、大義・大志などを思い、 自分の生き方と死に方に意味を持たせようとしてきたのだと考えられます。真の幸 福感とは、「どれだけ自分を超えたところで生きて、そして、死に際しても、どれだけ 自分のために死ぬというところから離れられたのか」で得られるものではないであろ うかと今は結論づけています。 そして、真の幸福感を得るためには、自分を無くして、「どれだけ世の中のために、 または人のお役に立てたのか」ということの実践が大切であると考えています。
川口 英俊 拝
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