往生院だよりコラム 11月号より
幻想の繁栄2 〜特別会計の改革〜

  日本は今、財政再建へ向けて構造改革の過渡期にあります。八月号では一般会計に
 おける国債などの借金について取り上げましたが、実は国の財布にはもう一つあり、
 特別会計の問題について今回は書かせて頂こうと思います。なぜならば、一般会計17年
 度予算のうち、48兆円は特別会計へと繰り入れられているため、本来は一般会計と特別
 会計を同時に議論しないと、実は財政再建の本質がぼやけてしまうためであります。増税・
 負担増と国民にとって非常に厳しく痛みが押し寄せてくる中、政府の歳出削減、特別会計
 の見直しも重要な改革のテーマとなっています。
  一般会計とは別に設けられた特別会計とは、国が行う特定の事業や特定の資金を運用
 するための会計で、31もあります。現在、この特別会計における既得権益・非効率の温床・
 無駄遣いについて国会でも本格的に議論されるようになってきました。いまいち仕組みが
 わかりにくく、不透明さもあり、あまり理解されていないのも事実であります。
  特別会計の予算は、17年度純計額で205兆円(総額は412兆円)と一般会計予算82兆円
 (このうち48兆円が特別会計への繰り入れ)の2.5倍に及び、独自財源(これも国民の税金
 ・負担によるものがほとんど)もある中、巨額の予算が、所管官庁の強い裁量権限で使わ
 れています。一般会計は議会でも審議し、国民の目も届きますが、この特別会計について
 は、ほとんど聖域化され、これまでも省庁・族議員の既得権益の温床と批判されてきました。
 なかなか議会・国民の監視の目が届かず、それゆえに無駄・非効率の温床と化してしまっ
 たのであります。現在この特別会計における無駄遣いの実態が改めて噴出し始め、政府
 もようやく本腰となり、改革を進めようとしています。
  一般会計では議会・国民の目もあって予算の付けにくい事業を特別会計に回し、財政融資
 資金(国債とほぼ変わらない性格を持つ債権である財投債の発行。その他、資金調達の方法
 として政府保証債、財投機関債もあります)で手当する「特会とばし」「財投融資とばし」を行い
 予算を付けたり、また、事業を都合のいいように拡大解釈し、自分たちの天下り先の特殊法人・
 ファミリー企業に無駄な資金を流したり、採算度外視の非効率事業、ひどい場合には、一部
 官僚たちの贅沢厚遇のためにも使われてしまっていることもあります。それによる赤字・不良
 債権・隠れ借金は、一体どれほどになっているのか・・また、その赤字・不良債権処理・借金
 返済のために、結局、一般会計の予算から持ち出して補填し、更に税金でまかなうという愚も
 なされています。地方自治体における特別会計事業で失敗した無駄・非効率事業、第3セクタ
 ー、特殊法人事業の破綻などでも同じような一般会計による補填の構図があり、その度ごとに
 税金の無駄遣いであると地方議会においても問題となっています。
  こんな状態であれば、増税し、負担を強いたところで、国民の理解は到底得られるわけもなく、
 このまま特別会計の改革が不十分に終われば、無駄・非効率が繰り返され、いくら増税・負担
 増で歳入が増えたとしても、結局歳出が減らず借金も増えていくこととなります。
  とにかく増税・負担増をする前に、政府は、国・地方・特殊法人の一般会計と特別会計を連結
 決算させ、全体の債務がどれぐらいあるのかを正確に解明した上で、国民に対しての説明責任
 を果たし、歳出の削減・特別会計改革を進めていく必要があります。
  借金を積みに積み重ねた幻想の繁栄の中、目先の享楽にとらわれることなく、現実の足元を
 今一度確認し、これから襲ってくる増税・負担増の痛みとどのように対峙していくべきであるのか?
 医療・年金・介護・福祉など社会保障制度の問題において特に社会的弱者である高齢者や障害
 者にまで負担を及ぼすようなことでいいのか?一人一人がしっかりと進み行く改革に厳しい目を
 向けていかなければならないと考えます。

 川口 英俊 拝

 参照 財務省ホームページ・特別会計の見直し


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