往生院だよりコラム 特別号 ネットのみ公開
「光と影・・」

 はじめに・・

 「光と影・・」はまだ考察途上であり、考察を繰り返していく中、若干の修正・追記を考えております。

  人間は、五欲(食欲、財欲、色欲、名誉欲、睡眠欲)を持っています。
  その欲を光に例えると強い光(強欲)を求める程に、その影は黒さを増していきます。陰陽・・、
 欲という振り子を振れば振るほどに反対側へも当然に振れることとなります。
これは、人も国も同
 じであります。欲を出し過ぎれば過ぎるほどに、それだけのしっぺ返しが必ず訪れることとなります。
  コラム「幻想の繁栄」という表題で、日本の借金の問題について以前から述べさせて頂いて参
 りました。日本は敗戦の焦土の中から立ち上がり、めざましい経済発展を遂げ、豊かさと便利さ
 を謳歌して参りました。しかし、そのバブルの享楽にまで振れた振り子は同じように反対側へも
 振れていき、強い欲の光(経済繁栄)の影はかなり黒いもの(膨大な借金)になっているのはも
 はや明らかなことであります・・膨大な借金以外に黒い影を挙げるとすれば、自殺者の急増、犯
 罪の増加、家庭崩壊増、心の病の罹患者増、ニートの増加・・様々な不安が国民の意識の中で
 高まってきています・・
  人や企業は強くなった黒い影を薄めようと、ファンデーション(慈善基金)、ドネーション(慈善寄
 付)などを行い、経済・市場という財欲の魔物にとりつかれないように自制をし、社会還元・社会貢
 献で陰陽の調整を行うようにします。これは欲望渦巻く世界の中で生きていく上で誠に重要なこ
 とでもあります。特に欧米社会において、この意識は高くあります。しかし、日本においてはどう
 でしょうか・・
  何とかして敗戦の混乱から立ち直ろうと、とにかく経済合理性追求の傾向が強く全面に押し出
 され、影の黒さを薄めるための理念を確立しないままにやってきてしまいました。経済優先がため
 に犠牲となった命もたくさんあります。人も企業においてもなかなか社会還元・社会貢献ということ
 が形だけとなり、疎かになっていないでしょうか・・このバランスを誤ってしまうと影の黒い部分を
 薄めることができず、光(欲)を浴びた分だけ、黒い部分が私たちを覆うこととなりますし、振り子
 が振れた先(バブル経済の享楽)からその反対側へも振れることとなってしまいます。
  日本は戦後、振り子の幅を抑え、影の黒さを薄める努力をしっかりとしてきたと言えるでしょう
 か・・戦争の反省・国際貢献・人道支援・・表面上はしてきているようにも見えますが、アジア諸国
 ・特に中国・韓国に戦争謝罪を真に受け入れてもらえず、ODA・国連分担金の負担・国際貢献の
 成果とも言える国連安保理常任理事国入りはほぼご破算状態・・国が進めてきた国際平和維持
 活動も現地の国ではほとんど評価されていないのが現実であります・・
  実質、振り子の幅は抑えられず、影の黒さも薄めることはできていません・・これでは、やはり
 厳しい状態へと進むことを覚悟しなければならないのは明らかであります・・
  日本は光(経済繁栄)が強くなった分、その影として、凄まじい財政赤字を伴い黒い部分が色濃
 くなってきています。その振り子はまさに振り切った先(バブル経済の享楽)から、速度を上げて
 いよいよ真ん中付近に戻ってきています・・借金が1000兆円を超え、個人金融資産が1400兆円・・
 そろそろプラスマイナスゼロに差し掛かろうとしています・・そして、真ん中を過ぎた先から、バブル
 で振り切った部分と同じだけ反対側へと振れていくこととなります・・
  事実上破産した政府は、国債・預金を持つ国民に対して、「債権は返せなくなりました、預金は
 没収になり、国債は紙くずになりました」と謝らず、非を認めず、苦しい事実も告げず、「国のため
 に死んでくれ」と命令して踏み倒していくこととなります・・それはまさに太平洋戦争末期がそうであ
 ったように・・
  本当に太平洋戦争末期のようになってしまうのか?と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれ
 ません。もちろん、第二次大戦の悲劇、核の脅威により、それほど激しいものにはならないとは思
 いますが、事実上破産し、債権を国民に返せずに困った政府は、とにかく自分たちの体制は守り
 ながら、何とかしようとします。
  その方法として、歴史上において用いられてきたのが、戦争とインフレであります。借金1000兆円
 超・・国民の個人金融資産の差し押さえ、国債の紙くず化など政府が容易にするわけもないですし、
 当然責任も取ろうとせず、何としても自分たちの体制を守ろうとするでしょう。言い訳を繰り返し、
 小手先の延命措置を取りながら、どうしょうもないところまで進もうとします。
  その時に考えられるのが、インフレと戦争です・・もちろん、その前に増税・高負担は当然です
 が・・しかし、結局はどうしょうもなくなり、、その先にあるのが、インフレと戦争になります。先の大戦
 の教訓から、「国のために死んでくれ」と簡単に命令するわけにはいかないですが、口調は違えども
 それに近い形となることはあるでしょう。現在の9条改憲論議もその流れの一つであるのは皆さんが
 お気づきの通りであります。
  そして、巨額の戦費負担により、紙幣増刷、軍票・戦争国債発行、財産没収・・そして、インフレへ
 と向かいます。戦争とインフレは、同時並行で起こる現象でもあります。
  先の大戦の悲劇の教訓から考えると、日本においては戦争小・インフレ大となる可能性は高い
 です。しかし、どちらにしても、事実上、債務不履行・資産没収・国債紙くずとなるのであれば、傷
 口をこれ以上広げないうちにできるだけ人的にも資産的にも悲劇・犠牲を減らすことが大切であり、
 政府は責任を認め、国民に謝罪し、資産没収・国債紙くずを説明し、責任を取って経済優先体制
 を解体、福祉国家へのプロセスを進めていければ良いのではないだろうかと思います。
  このまま惰性でずるずると後退していけば、いずれドル大暴落を皮切りに、米経済・日本経済が
 崩壊、世界大恐慌へと加速し、世界的悲劇へと更に傷口が大きくなってしまう懸念もあります・・
  その時は、近いのか、遠いのか・・確かに未だ確定することは難しいですが、ある一つの何気
 ないほころび、蟻の一穴により、大崩壊へと向かうリスクは非常に高まっていると考えております。
 そのリスクについて、私たちはしっかりと情報収集し、情勢・動向を見極めていき、防衛意識と覚悟
 を持って日々を真剣に生きていかなければならないでしょう。

 川口 英俊 拝 平成17年11月23日・初稿公開



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