往生院だよりコラム 平成18年11月号より
「初期仏教を学ぶ」

  私は今年の六月に「日本テーラワーダ仏教協会」に入会し、主に機関誌から初期仏教を
 学び始めています。仏教は、インドからアジア全域に広がりましたが、その広がり方には
 大きく分けて二通りあり、中国・チベット・朝鮮半島、日本に渡ってきた仏教は、「大乗仏教
 ・北伝仏教」と総称され、一方で、スリランカ・タイ・ミャンマーなど東南アジアへと渡った仏教
 は、「上座仏教・南伝仏教」と総称されています。いずれが原始的な仏教により近いかと言
 えば、後者の方であると考えられています。
  私が修行において学んだ仏教は、臨済禅宗であります。禅専門道場・僧堂において坐禅
 ・勤行・参禅(禅問答)・作務・托鉢など専一・三昧の修行を通して、師家から法を受け継ぐ
 ために研鑽努力を行います。師家からの直接講義「提唱」もあり、臨済録・碧巖録・無門漢
 などから禅の教えを学びます。幾重にもある厳格な規律・作法を遵守していく中、「行住坐臥
 (ぎょうじゅうざが)」「己事究明(こじきゅうめい)」が禅修行の真骨頂であります。やがて修行
 を終えて道場を去ると、自らの学んだ禅の教えを世俗において他にも及ぼし活かしていく
 ことが求められることになります。
  臨済禅は、「大乗仏教・北伝仏教」で、仏教の源流を汲むものの、中国における思想と
 融合して確立された点が多くあり、原始的な仏教からはやや離れてしまっている傾向も少な
 からずあります。だからと言って、私は禅の教えを否定的に捉えているわけではなく、釈尊
 の教えにおける真理を探究していくためには、色々な視点からも学びを進めて検証していく
 ことが大切になると考えています。
  また、当山は単立寺院で檀家制度を廃止し、確かに臨済禅の法式で日常の御仏方への
 勤行、ご供養のお申し出があれば、お勤めをさせて頂いていますが、宗旨宗派を特に問う
 ことはありません。この宗旨宗派を信仰していなければいけない、この教えを厳格に守りな
 さいということは強制しませんし、お布施や寄付を強要することもありません。
  私自身も、ご供養の後で少しの時間行わせて頂く法話においても、特に学んだ臨済禅の
 教えに固執する気はなく、仏教に携わる拙い端くれ者として、釈尊の教えの真理について、
 常に見聞を広め、探究していく過程における自らの考えを述べさせて頂いているだけに過ぎ
 ず、私の考えが正しい、あれは間違っている、私は善だ、あれは悪だと、正誤・善悪の判断
 を強制することもありません。それぞれの皆さん自身であらゆる物事について考えるきっかけ
 となれば最良ではないだろうかと考えています。そのことは、もうかれこれ五年近く続けさせて
 頂いているこの「往生院だより」におけるコラムの内容についても同様であります。
  以上のような経緯もあり、根本仏教・初期仏教を説いているとされる「日本テーラワーダ仏教
 協会」における教えについても一から学んでいる次第であります。自身、色々とこれまで仏教
 におけることで疑問や懐疑的に思っていたことが、すっきりと解決できていくこともあり、もちろん
 強制はしませんが、苦悩多きこのご時世、是非ともその教えについても学び知る意義があると、
 お薦めさせて頂いています。


   参照:日本テーラワーダ仏教協会ホームページ

 平成18年10月18日 川口 英俊 拝

 


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